配膳ロボットを街中のお店で見かける機会が増えてきました。社会情勢や技術の発展など、さまざまな要因によって急速に導入店舗が増えていますが、日本国内においては現在どのくらいの配膳ロボットが導入されているのかご存知でしょうか?
この記事では、配膳ロボットの導入状況について、実際の導入事例をご紹介していきます。また、配膳ロボット導入に向いている店舗・場所も解説しますので、人手不足などにお困りの方はぜひ参考にしてください。
目次
配膳ロボットの導入状況は?
配膳ロボットはさまざまな場所で徐々に導入されており、日本国内では2023年7月時点で6,000台以上も稼働しています。株式会社富士経済の調査・分析によると、2023年末には9,252台、2030年には30,890台以上の導入台数に達すると予測されています。
導入場所の大部分は飲食店ですが、配膳ロボットにはさまざまな使い方ができるため、その他の場所でも着々と導入台数が増えているようです。
業界別|配膳ロボットの導入事例
配膳ロボットは飲食店以外にもさまざまな業界で導入されています。どのような場所で導入されているのか、導入事例を解説します。
工場・倉庫
配膳ロボットは指定した場所まで物を運搬してくれるため、工場や倉庫での導入が増えています。工場では備品や工具、倉庫では商品などの運搬が、配膳ロボットの活躍している場面です。
配膳ロボットを稼働させることで、人間の作業は備品や商品などを乗せてロボットに指示を出すだけになります。移動の手間が無くなるのでスタッフの疲労が軽減でき、さらに空いた時間で他の作業に取り組めるので、全体的な業務効率もアップするのです。
ホテル
配膳ロボットはホテルでも活躍しています。ホテルではベッドメイキングやルームクリーニングなど、各部屋を回って行う業務が非常に多いです。その際に、シーツやタオル、掃除用品などを自動で運べる配膳ロボットが活躍します。
さらに、AIを搭載した会話ができるモデルの配膳ロボットならば、ホテル内で迷っているお客さまを案内したり、周辺の観光・イベント情報を紹介したりなどの接客も可能です。
このように、配膳ロボットは業務の効率を良くするだけでなく、エンターテインメントとしてお客さまを楽しませることもできます。
博物館・美術館
博物館・美術館では、AIを搭載した配膳ロボットが導入されています。AIを搭載した配膳ロボットは、人工知能による音声認識が可能なため、来場者との会話が可能です。
施設内の案内や作品の紹介はもちろん、トレー部分にパンフレットを乗せて館内を走らせ、配布して回るといった使い方もされています。
期間限定の展示が多い施設では、スタッフが展示物に対する知識をその都度覚えなければならないこともありますが、AI搭載の配膳ロボットならば、人間に代わって来場者からの質問に受け答えをすることができるのです。
このような形で、スタッフの負担を減らしつつ、来場者に満足度の高い体験を与えられます。
飲食店
飲食店の導入店舗は多く、配膳ロボットが働いているイメージも最も強いのではないでしょうか。
料理の配膳や下げ膳はスタッフにとって大きな負担になりますが、配膳ロボットにお任せすることでそれを大きく減らすことができます。
また、飲食店では、不特定多数の人が密室でマスクを外して飲食するため、感染症の不安がありました。しかし、非接触・非対面で配膳・下げ膳できる配膳ロボットならば、感染症対策にも効果を発揮します。
さらに、AIによる音声認識や、操作しやすいタッチパネルを搭載したモデルは、客席への案内や、注文・会計など、配膳以外の接客を行わせることも可能です。
配膳ロボットはスタッフの負担を大きく減らし、人手不足解消に貢献してくれます。
病院・介護施設
病院や介護施設でも配膳ロボットの導入が増えています。
施設内の食堂での配膳・下げ膳はもちろん、入院患者や入居者のお部屋を回って食事を届けることも可能です。また、書類の運搬など事務作業のサポートとしても活躍します。
病院や介護施設は体の弱い方が多く、さらに感染症が流行するとクラスター(集団感染)が起きてしまいやすい場所です。配膳ロボットを導入することで、できるだけ人と人が対面・接触する機会を減らせるため、クラスターのリスクを軽減する効果が期待できます。
スーパー
スーパーは物の移動が多い現場のため、たくさんの物を運べる配膳ロボットが活躍する場所でもあります。
商品や備品の運搬はもちろん、AI搭載の音声認識可能なモデルならば、お客さまへ売り場の案内をすることも可能です。さらに、チラシや試食品などを乗せて宣伝することもできます。
また、品出し業務の負担も軽減してくれるというメリットもあります。スーパーでは、商品の入荷や補充など、品出し業務は欠かせません。しかし、品出し業務は重労働であり、人手不足も深刻な問題となっています。配膳ロボットを活用することで、品出し業務の負担を軽減し、人手不足の解消につなげることができます。
老若男女問わず集まる場所なので、エンターテインメントとしてお客さまを楽しませることができるのも、スーパーへ配膳ロボットを導入するメリットと言えるでしょう。
配膳ロボットの導入がおすすめな店舗
配膳ロボットはどんな店舗でもおすすめできるわけではありません。配膳ロボットも万能ではなく、活躍しにくい環境があるからです。
では、どんな店舗ならば配膳ロボットはおすすめなのか、導入すれば活躍が期待できる店舗の特徴についてご紹介します。
人手不足で悩んでいる
配膳ロボットは一度の充電で長時間の稼働が可能です。休日も不要なため、365日いつでも、時間を問わず稼働できます。
例えば飲食店の場合、料理を運ぶだけでも1人以上の人員を割かなければいけません。しかし、配膳ロボットに配膳・下げ膳をお任せすれば、スタッフは他の接客に専念できるため、人手不足の解消に繋げられます。
AIを搭載しているモデルならば、お客さまとの会話やお会計・座席案内などの接客もお任せできるので、さらに少ない人数でお店を回すことが可能です。
配膳する量や頻度が多い
料理や商品、備品などをたくさん運ばなければならない現場は、スタッフの負担も大きいものです。何度も料理や商品を運んでいると、疲労が溜まってミスも発生しやすくなります。
配膳ロボットが負担の大きな運搬作業を担うことで、スタッフが疲れてしまうのを防いで、ミスによる損害のリスクを下げることができるのです。
重いものを配膳する
配膳ロボットは重いものの運搬も可能です。とくに工場や倉庫は、ロットごとに商品などを運ぶ機会が多く、1箱だけでも相当の重さになってしまうことも珍しくありません。そういった時に配膳ロボットを利用すれば、運搬にかかるスタッフの負担を軽減することができます。
また、配膳ロボットを導入することで、女性や高齢者など重いものを運ぶことが苦手な人でも働きやすい環境に変えることも可能です。
ファミリー層・若い世代が客層の中心
店舗の客層が、ファミリー層や若い世代が中心ならば、配膳ロボットを導入しやすいと言えます。何故なら、ロボットが料理や商品を運んでくることに対して抵抗感のあるお客さまが少ないため、いきなり導入してもすぐに受け入れてもらえるからです。
現在、一般的に使われている配膳ロボットは、料理が運ばれてきたら自分たちで手に取り、注文や会計の際もタッチパネルを使ってお客さま自身が操作しなければいけません。しかし年代の若い方は、スマートフォンやタブレットといったデバイスに慣れているため、問題なく使いこなせることがほとんどです。
ファミリー層や若い世代が客層の中心ならば、安心して配膳ロボットを導入できるでしょう。
珍しさによる広告効果を狙いたい
配膳ロボットの導入台数は増えているものの、街中に溢れているわけではなく、まだまだ珍しい存在です。そのため、導入することで珍しさによる宣伝効果が期待できます。
やはり、配膳ロボットが活躍している場面を目の当たりにすると、つい写真や動画を撮影してSNSにアップしたくなるものです。お客さまが配膳ロボットの写真や動画をSNSにアップすることで、自然と配膳ロボットが活躍するお店として口コミが広まります。
「ロボットが運んでいる姿を見たい」というような来店のきっかけを作れるため、新規客はもちろんリピーターを獲得する機会も増やすことができます。
配膳ロボットの導入が難しい店舗とその解決策
配膳ロボットはどんな店舗にもおすすめできるわけではなく、中には難しい店舗もあります。では、どのような店舗は導入が難しいのか、解決策とともに解説します。
頻繁に店内の配置が変わる
季節ごとに内装を変えたり、席数を増減したりなど、頻繁に店内の配置が変わるお店や施設は配膳ロボットの導入が難しいと言えます。その理由は配膳ロボットのマッピングの仕組みです。
配膳ロボットの中には、天井や床にマーカーを設置してマッピングするモデルがあります。このようなモデルをマーカー式と呼びますが、これは走行ルートがマーカー上のみと決まっているため、模様替えに対応するには再度マーカーを付け直す必要があり、非常に手間がかかります。
しかし、AIを搭載したマーカー不要の配膳ロボットならば、自動で店内・施設内のマッピングが可能なため、模様替えにも対応しやすくなっています。頻繁に店内の配置が変わる店舗に導入するならば、AI搭載の配膳ロボットの導入をおすすめします。
幅の狭い通路や段差が多い
配膳ロボットは、幅の狭い通路や段差が多い場所を通ることができません。そういった状況の店舗で配膳ロボットを利用したい場合、工夫が必要です。
もしも幅が狭い通路が多いならば、配膳ロボットが走行できるだけの幅を確保できるように、可能な限り座席数を減らしてみましょう。配膳ロボットによって席の回転率もアップするため、座席が少なくなっても、ご案内できるお客さまの総数には影響しないことがあります。
また、段差があると躓いて走行できませんが、後付でゆるやかなスロープを用意するなどの対策を行うことで配膳ロボットを導入しやすくなります。最近では、さまざまなデザインの後付スロープが販売されているので、内装の雰囲気を壊さずに配膳ロボットの走行ルートを確保できます。
シニア層が多い
シニア層には、機械と触れ合うこと自体に抵抗感を抱く人も少なくありません。
自分自身が操作をするわけではなくても「難しいから理解できない」と思ったり、「ロボットに接客を任せるなんて手を抜いている・冷たい」と思ったりする人もいます。ただ導入するだけではシニア層からの支持が減ってしまう可能性があるので注意が必要です。
もしもシニア層が多い店舗ならば、まずは丁寧に配膳ロボットとの触れ合い方を案内したり、配膳以外のサービスに力を入れたりなど、抵抗感を薄める対策を行いましょう。
店の雰囲気が配膳ロボットに合っていない
配膳ロボットは近未来的でスマートなイメージが強いため、お店によっては雰囲気が合わずに導入が難しい場合もあります。
例えば間接照明とムーディーで少し暗めの木材を中心としたレトロな純喫茶に、近未来的なデザインの配膳ロボットがいると、アンバランスでお店の雰囲気を壊してしまいかねません。
もしも配膳ロボットと店舗の雰囲気が合わないならば、デザインをカスタムできる配膳ロボットを選ぶとよいでしょう。
配膳ロボットのホームページや販売ページでは、スタンダードなデザインしか掲載されていないことが多いですが、中にはメーカーに依頼することで塗装などを変更できるモデルもあります。
また、機種によっては、ホワイトやブラックなどの定番以外のカラーバリエーションが用意されていることもあるので、お店の雰囲気に合った配膳ロボットを選ぶようにしましょう。
対人での接客を重視している
配膳ロボットは人間による接客の機会を減らしてしまうため、お店の方針としてできるだけ対人で接客をしたいと考えている場合、導入が難しいでしょう。
できるだけ対人での接客機会を減らさずに配膳ロボットを導入するならば、下げ膳や備品の運搬など、目立ちにくいところだけに配膳ロボットを使用するのがおすすめです。
また、お客さまの前へ出るホール業務ではなく、裏方の業務だけに配膳ロボットを使用するのもひとつの手段として考えられます。
まとめ
年々、配膳ロボットの導入台数は増えています。これまで配膳ロボットを利用していたのは大手企業が中心でした。しかし最近では、補助金制度の充実や、技術の進歩によってさらに広い場面で使えるようになったことから、大手企業以外の店舗・施設でも導入が始まっているのです。
配膳ロボットはただ物を運搬するだけではありません。使い方を工夫することで、お客さまを案内したり、パンフレットを配布したりなど、幅広い場面で活躍させられます。
配膳ロボットの中には、トライアル制度を実施しているモデルもあります。レンタルやリースを利用すれば、月額数万円程度での導入も可能です。
もし何らかの問題を抱えていて、それが配膳ロボットで解決できそうだと感じていたら、ぜひ一度試してみて、配膳ロボットの機能や魅力を確かめてはいかがでしょうか。