飲食店などで見かける機会が増えている配膳ロボットですが、最新の配膳ロボットにはAIが搭載されており、さまざまな作業をこなすことができるようになりました。AIを搭載したことで配膳ロボットを導入するメリットが大きくなり、世界中で市場が急速に拡大しています。
なぜ配膳ロボットにAIが搭載されたのか、従来の配膳ロボットとの違いやAI搭載によって得られるメリット、活用事例について解説します。
目次
AIとは?ロボットとの違いは?
「AI(Artificial Intelligence)」とは日本語で人工知能のことを指します。AIは機械学習によって精度を高められ、より作業や判断を効率化することが可能です。一方の「ロボット」とは、決められた動作を実行できる機械のことを指します。物理的な本体を持たないソフトウェアもロボットに含まれます。
AIとロボットの大きな違いは、自律的な動きができるかどうかです。AIは知能が備わっているため、人の指示に対して的確な動きを実行したり、優先順位を把握してタスク消費を効率化したりといった、自律的な動きが可能です。しかしロボットは、予めプログラムされた動きしかできないため、臨機応変な対応を求めることはできません。
なお近年では、ロボットのプログラムにAIを活用した、AI搭載ロボットも次々と登場しています。AI搭載ロボットは、従来のロボットよりも複雑なタスクを実行できるため、状況を判断して必要な動作を行い、効率的に作業を進めることができます。
「AI配膳ロボット」と「配膳ロボット」の違い
配膳ロボットとは指示された場所まで、料理や備品などを運搬できるロボットのことです。配膳ロボットの中でもAIを搭載したロボットをAI配膳ロボットと呼びます。
まず、AIを搭載していない配膳ロボットは、走行ルートとなる床や天井にマーカーを設置してマッピングを行います。マーカー上しか走行できないため、レールの上を走る電車のような動作になります。センサーなどによって障害物の回避は可能ですが、ルートから外れた動きをすることはできません。
一方のAI配膳ロボットは、センサーや3Dカメラなどによって自身の位置を把握し、最適なルートを判断して運搬することができます。また、音声認識機能が搭載されているモデルならば、お客さまやスタッフとの会話、接客、会計、注文など、複雑なタスクを実行することが可能です。
ディスプレイ搭載のモデルならば、表情や表示を必要に応じて変化させることもできます。このように、AI配膳ロボットは従来の配膳ロボットよりも高機能であり、複雑なタスクを依頼したい場合に最適です。
配膳ロボットにAIを搭載するメリット
配膳ロボットは近年、急速に市場が拡大しています。市場拡大の理由には、配膳ロボットにAIを搭載したことが大きく影響していると考えられます。なぜならば、配膳ロボットにAIを搭載することで、さまざまなメリットを得られるからです。
配膳ロボットにAIを搭載するとどんなメリットがあるのか解説します。
リモコン不要で音声による指示が可能
配膳ロボットは人間が指示をしなければタスクを実行することはできません。そのため、従来ならば、ロボットとは別で準備したPCやタブレットなどのリモコンで操作する必要がありました。
AI搭載の配膳ロボットでもリモコンや本体ディスプレイでの操作は可能ですが、音声認識機能が備わっているため、音声による指示が可能です。
音声による操作では、ディスプレイなどに直接触れる必要がないため、衛生面の強化へと繋がります。さらに、忙しくてディスプレイやリモコンを操作できない場合でも、音声だけでスムーズに指示を行うことができます。
音声による接客が可能で親しみやすい
ただ単に自動で動くだけのロボットの場合、機械的な動きしかできず淡々とタスクを実行するため、「接客に感情がこもっていなかった」などの冷たい印象を抱かれがちです。
そこで、配膳ロボットにAIを搭載することで、スタッフだけでなく、お客さまとも音声でのコミュニケーションが可能となります。店舗や施設のマニュアル通りの接客はもちろん、お客さまとの日常会話も可能なので、機械的な冷たさは感じにくく親しみやすい印象になります。
搭載されているAIの種類にもよりますが、モデルによっては日本語だけでなく外国語にも対応しているため、接客できる層が広がります。そのため、より多くのお客様を受け入れる体制を整えたい場合にも、AI搭載の配膳ロボットが役立ちます。
最適ルートを割り出して作業を効率化できる
AIが搭載されていない配膳ロボットは、決められたルート上しか走行できないため、障害物が多いからと別のルートへ変更したり、近道をしたりすることはありません。
しかし、AI搭載の配膳ロボットならば、自身の位置を把握して効率のよい最適ルートを割り出すことが可能です。複数台で連携している場合も、優先順位の高いタスクを持った配膳ロボットに道を譲ることができるため、効率的にタスクを実行できます。
さらに、3Dカメラや障害物センサーなどを組み合わせて、客席だけでなく人や備品などの障害物を回避することもできます。突然人が飛び出してきても回避できるため、衝突の心配もありません。
AIを搭載した配膳ロボットの活用事例
AI配膳ロボットはどのように現場で活用されているのか、活用事例をいくつかご紹介します。
飲食店での配膳・下げ膳
配膳ロボットと言えば、やはり飲食店での活用が多く見られます。
指定の場所まで料理や食器(シルバー)類を配膳するのはもちろん、食べ終わった食器を回収する下げ膳に携わることも可能です。人がトレーや手で使って運ぶよりも安定感があり、安全に配膳・下げ膳を行うことができます。
特に食べ放題や飲み放題を実施している飲食店では、客席への配膳回数が多くなりやすいです。そのため、効率的に作業できるAI配膳ロボットを導入することで、ホールスタッフの負担を減らしてより質の高いサービスの提供へと繋がります。
スーパー・商業施設での販促・案内
AI配膳ロボットは飲食店だけでなく、スーパーなどの商業施設でも活用されています。
AI搭載なので、物品の運搬以外にもチラシや試飲・試食品を運びながら宣伝する販促活動も可能です。店内を巡回しながら宣伝できるので、売り出したい商品を効率的にお客様へアピールできます。
もちろん、宣伝中にお客様から声を掛けられても受け答えできるほか、チラシや試食品に手を伸ばす人が居たらきちんと静止して接客することができます。
また、スーパーや商業施設では、お客様が探している商品のエリアをスタッフに尋ねることがよくあります。そういった時でも、AI配膳ロボットはスタッフに代わって商品エリアを案内することも可能です。正確に案内できるだけでなく、おすすめの商品を紹介することもできます。
お客さまの視点に立って考えても、スタッフへ声をかけにくい状況でも気軽に声をかけられるAI配膳ロボットは、買い物の強い味方となってくれる存在です。
ホテルでの運搬作業・案内
AI配膳ロボットはホテルでも大いに活躍してくれます。
ホテルは一般的な飲食店と比較すると敷地が広大であり、なおかつシーツやアメニティなど、頻繁に運搬作業が発生します。敷地が広大なほど負担は大きく、作業の効率も落ちてしまいがちです。
AI配膳ロボットに運搬作業全般をお任せすることで、スタッフの負担が軽減され、ポスピタリティの向上へと繋がります。
宴会会場やレストランでは、決まった時間にまとまってお客様が入ることが多いため、配膳や下げ膳を効率よく実行できるAI配膳ロボットはとても強い味方になるでしょう。パーティーやビュッフェでは、小皿を乗せて客席を巡回させることで、密集対策にも繋がっています。
また、ホテル内で迷ってしまったお客様を目的地まで案内することも可能です。外国語対応のモデルならば、外国人観光客へのスムーズな対応もできます。案内中に、ディスプレイ上で周辺の観光地やイベント情報を紹介しながら走行するといった宣伝活動もお手の物です。
このように、ホテルでもさまざまなシーンでAI配膳ロボットが活用されています。
AI配膳ロボットの導入コストを抑える方法
AI配膳ロボットは高性能である分、導入時に高額な初期費用が必要になるデメリットがあります。しかし、導入コスト自体は大幅に抑えることも可能です。
導入コストを抑える方法は主に2つあります。1つ目が「リース・レンタル制度を利用すること」、2つ目が「補助金・助成金精度を利用すること」です。
リース・レンタル制度は、月額もしくは年額費用を支払うだけで高機能なAI配膳ロボットを利用することができます。月額は約数万円程度で、長い間使い続ければ費用はかさみますが、導入のハードルが大きく下がるのがメリットです。
また、自治体や各団体では、AI配膳ロボットの導入に利用できる補助金・助成金制度を実施しています。もらえる金額はさまざまですが、数十万円から、規模によっては数千万円まで補助してもらえるため、導入コストを大幅に抑えることが可能です。
導入コストの工面が難しい場合やできるだけ抑えたい場合は、ぜひリース・レンタル制度や、補助金・助成金制度の利用を検討してみてください。
AI配膳ロボットで接客効率をアップしよう
配膳ロボットを導入することで、現場のオペレーションを効率化に繋がり、生産性やホスピタリティの向上が可能です。特にAIを搭載した配膳ロボットは、従来の配膳ロボットよりもできることの幅が広がっていて、導入するメリットもたくさんあります。
AIの技術は日々進歩しており、今後もますますできることが増えるでしょう。特に接客が必要なシーンでは、AI配膳ロボットによって接客の質を上げることができ、顧客満足度アップに繋がります。
作業をより効率的にして円滑に現場を回したい、よりクオリティの高い接客を提供したいならば、ぜひAI配膳ロボットの導入をおすすめします。