2019年から始まった働き方改革は、飲食店にも大きな影響を与えました。正社員との格差や長時間労働が是正され、経営側にも法令の遵守や従業員の正しい管理など大きな意識改革が求められています。
さらに日本での働き方は、2020年にコロナウイルスが流行したことで、大きく変化しました。働き方改革が段階的に施行され、大企業だけでなく中小企業で働く人にも柔軟な働き方が定着しつつあります。
本記事では、飲食店における働き方改革のポイントや成功事例を紹介します。働き方改革の具体的な内容についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食店に働き方改革が求められている3つの理由
人手不足などで労働環境が過酷化しやすい飲食店にも、働き方改革が求められています。主な理由は、大きく3つです。
過酷な勤務が常態化している
飲食店は人手不足問題が特に深刻化しており、過酷な勤務体制が常態化しています。
勤務時間の長期化や休日の不足、不規則勤務などが当たり前になってきており、従業員の心身の健康が保たれなくなっているのが現状です。
こうした状況は、人手不足をさらに加速化させています。また、新たな人材の確保が難しくなっており、困難な状況から抜け出しにくくなっているのです。
働き方改革は、少子高齢化に伴う働き手の不足や働く人のニーズの多様化に対応し、人手不足問題を解決する手段として実施されています。
時代に即した働き方を実現することで、人手不足問題の解消へと繋げられるでしょう。
法整備が進んでいる
働き方改革は、2019年から段階を経て法整備が進められています。大企業から中小企業へと段階的に適用されており、対応せざるを得なくなっている状態です。
飲食店でも、長時間労働の是正や多様な働き方の実現、公正な待遇の確保などに取り組まなければならなくなっています。
例えば「月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ」など、企業の金銭面に影響を与える制度も少なくありません。これまで対応してこなかった飲食店にも、早急な対応が求められています。
働き方改革が当たり前になってきている
法整備が進むことで、国民にも広く働き方改革が知られるようになりました。
労働者の希望に応じた柔軟な働き方が求められているため、これまでと同条件では人が集まりにくく、優秀な人材の確保が難しくなっています。
働き方改革は業種を問わず求められており、飲食店も例外ではありません。
今いる従業員を失わないためにも、積極的に働き方改革を実施し、時代のニーズに応じて変革を遂げるべきだと言えるでしょう。
働き方改革の具体的な内容
働き方改革はいくつかの項目に分かれ、労働環境の質の改善や生産性の向上を目指しています。具体的な内容を確認していきましょう。
1. 時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制は、長時間労働による健康への影響を抑え仕事と家庭との両立を実現させたり、女性や高齢者が仕事につきやすい環境を作ったりするのが目的です。
残業時間の上限は、原則として月45時間、年360時間となり、特別な事情がなければこれ以上働かせることはできなくなりました。
例外でも下記の条件を超えることはできず、罰則も設けられています。
- 年720時間以内
- 複数月平均80時間以内（休日労働を含む)
- 月100時間未満（休日労働を含む）
残業時間の上限規制は、1947年に制定された労働基準法において初めてのことで、大企業は2019年から、中小企業は2020年から施行されています。
2. 勤務間インターバル制度の導入促進
働く人の生活時間や睡眠時間を十分確保するために、休息時間（インターバル）を確保する制度が新たに設けられました。
勤務終了から翌日の出社までの間に適切な時間を確保することで従業員の健康を維持し、プライベートと仕事の時間にメリハリをつけより生産的に働くことができます。
インターバル制度の導入は、従業員の働く環境を改善し、従業員の定着や離職率の減少などが期待されています。
働き方改革が進んだ現代においては、従業員が十分な休息のもと人間らしく生活することや、ワークライフバランスを保ちながら働けることが求められているのです。
3. 残業割増賃金率の引き上げ
2023年4月から、残業割増賃金率も引き上げられました。
中小企業に関してはこれまで25％だったものが50％に引き上げられ、大企業と同水準になっています。
残業割増賃金率の引き上げは、長時間労働の是正が目的です。従業員の勤務時間を正しく把握し、長時間労働が常態化しないよう管理することが求められています。
4. 年次有給休暇の取得の義務化
これまで使用者に義務のなかった従業員の年次有給休暇の取得ついても、働き方改革の一環として2019年から義務化されました。
年次休暇が10日以上ある従業員に対しては、年次有給休暇を付与した日から1年以内に、時季を限定して5日間取得させなければなりません。
年次有給休暇は、従業員の心身の健康を保ち、リフレッシュを図ることが目的です。
働き方改革によって、すべての企業で年次有給休暇が取得できるようになりました。
使用者は時季の指定や年次有給休暇の取得計画を立てるなど、確実な取得に向けての対策を進める必要があります。
5. 労働時間の客観的な把握の義務化
2019年4月から、客観的な記録による労働時間の把握が義務化されました。
勤怠ツールを導入するなどして、すべての従業員の労働状況を客観的な方法によって正しく把握しなければなりません。
労働時間の未把握は法令違反になり、是正勧告がなされるようになりました。
客観的な把握のために、タイムカードやICカードなどを活用し、労働日ごとの始業・終業時刻を記録しましょう。
また労働時間の記録に関する書類は3年間保存しなければならないと定められているため、適切な措置を講じる必要があります。
6. 公正な待遇の確保
働き方改革では、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保について見直しがなされました。
正規労働者と非正規雇用労働者との間で不合理な待遇差を設けてはならないとされ、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、格差をつけることが禁止されています。
公正な待遇の確保は、従業員が多様で柔軟な働き方ができるようにするためです。
労働者に対する待遇に関する説明義務も強化され、2020年4月から施行されています。
7. フレックスタイム制の拡充
フレックスタイム制は、労働者が自ら労働時間を決めることで、効率よく働けるようになる制度です。
労働時間の調整を可能にすることで、働く人のニーズに合わせ柔軟な働き方が選べるようになりました。
プライベートと仕事との時間のバランスが取りやすくなり、子育てや介護など個別の事情に合わせて働けるようになります。
使用者にとっても労働生産性や定着率が上がるなど、メリットが感じられるでしょう。
8. 高度プロフェッショナル制度の新設
高度な専門的知識を有する人を対象に、労働基準法に定められた規定を適用しない働き方ができるのが高度プロフェッショナル制度です。
適正な労働条件を確保するための指針が別に定められており、労働基準法の規定を適用せずに働けるようになります。
高度プロフェッショナル制度は適用される職務や年収要件などが明確に定められており、飲食店には大きな影響はありません。
意欲や能力を発揮できる環境を作り、より自分らしく働けるようになる新しい制度です。
飲食店が働き方改革に取り組むポイント
飲食店が働き方改革に取り組むときは、3つのポイントに沿って進めるとスムーズです。
1. 労働時間や労働条件の見直し
飲食店では、働き方改革の大きな柱である労働時間や労働条件の見直しから取り組みましょう。
時間外労働の上限規制にひっかかっていないか、業務間インターバルが確保できているかなどの確認をおこないます。
また、休日が十分とれているか、時間外労働が特定の人に集中していないかなども合わせてチェックしましょう。時間外労働の把握ができるシステムなどを導入すると、確認が容易になるでしょう。
2. 業務の効率化
働きやすい環境づくりのために、業務の効率化を進めましょう。業務のデジタル化を進めたり新たな設備を導入したりすることで、効率よく業務の効率化に取り組めます。
業務の一部を外部委託したり、ロボットを導入して自動化したりするのもおすすめです。例えば飲食店なら、配膳ロボットを導入すると非常に効果的です。
例えば双日株式会社が取り扱っているOrionStar社のロボットは、注文や配膳、下げ膳といった飲食店におけるルーティン業務を任せられます。
ピークタイムの人手不足や人件費の削減に役立ち、働き方改革を進めたい飲食店の大きな力になってくれるでしょう。
配膳ロボットがどのように活躍するのかや、飲食店におすすめのロボットは利用シーンのページで紹介しています。こちらもご確認ください。
また飲食店での導入事例も以下のページで紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
>>配膳ロボットの導入事例はこちら
3. 経営者の意識改革
働き方改革に取り組むためには、経営者が正しい知識を持ち、確実に実施していかなければなりません。
法令に従って労働環境を改善するという意識を強く持つことで、法令違反や労働問題に発展することを回避できます。
働き方改革はもはや常識になり、どの業界でも求められています。法改正を正しく理解し適応していくことで、人員の確保や離職率の低下につながり、安定して経営できるようになるでしょう。
飲食店が働き方改革に成功した具体例
働き方改革を進めるのは難しいと言われる飲食店でも、勤務時間の改善や業務の効率化に成功した企業は少なくありません。具体例を見ていきましょう。
24時間営業の停止｜ロイヤルホスト
全国に224店舗を展開するファミリーレストラン ロイヤルホストは、24時間営業の廃止や店休日の実施、従業員への7連休取得の推奨などの思い切った働き方改革を行いました。
早朝や深夜の時間帯に働いてくれる人を確保するのは難しいという課題から、顧客と従業員の満足度のバランスを考え、思い切った改革を実施したのです。
労働環境の改善と同時に業務やサービスの見直しをおこない、より品質やサービスの向上を図った結果、営業日が減っても増収という結果につながっています。
また、店休日を設けることで店舗の清掃や設備点検などもしっかりおこなえるようになり、快適な店舗づくりも同時に進められています。
100食限定発売｜佰食屋
ステーキ丼専門店 佰食屋は、1日の販売数やメニューを限定することで、食品ロスの徹底排除とスタッフの残業時間の削減に取り組んでいます。
売り上げを限定することで安定的な利益の獲得を実現させ、従業員の満足度もアップしました。
残業が発生しないため、スタッフは自由な時間が増えたり家族との時間を楽しんだりといった有意義な生活が送れています。
働き方改革を逆転の発想で成功させた事例として注目されており、飲食店でもアイデア次第で働き方改革ができることを証明しているといえるでしょう。
配膳ロボットの導入｜アワーズ
株式会社アワーズでは、配膳ロボットを導入することでスタッフの労働環境の改善や業務の効率化に取り組んでいます。
ロボットの導入で人手不足が解消でき、無理な残業や長時間勤務になるのを防ぎ、従業員の負担を軽減しました。
また、同時に接客サービスの向上も実現させ、顧客満足度のアップにつながっています。
また、1人ひとりの負担を減らしたことでスタッフの満足度が上がり、安心して働ける環境作りが実現できた事例です。
>>アワーズの配膳ロボット導入事例はこちら
まとめ：飲食店にも働き方改革が求められている！ツールや配膳ロボットなどの導入で業務の効率化を進めよう
働き方改革は、飲食店にも労働環境の改善や自由な働き方の実現をもたらしています。
人手不足が深刻化し、過酷な勤務が常態化している飲食店にとって、働き方改革が与える影響は少なくありません。
しかし、ニーズに沿った働き方ができるようになることや、よりよい労働環境のもと働けるようになることで、人手不足問題は解消に向かうと期待されているのです。
飲食店の働き方改革には業務の効率化が必須となるため、各種ツールや配膳ロボットなどの導入が急務となるでしょう。
双日株式会社では、OrionStar社製のAIロボットを扱っており、さまざまな飲食店への導入をお手伝いしております。ぜひお気軽にご相談ください。
